戦争SF不条理
スローターハウス5Slaughterhouse-Five
Kurt Vonnegut / アメリカ / 1969年 ・ 読了目安 200分
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「そういうものだ」——時間の罠に囚われた男が見た、戦争の無意味な真実。
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あらすじ
あらすじ(ネタバレあり)
第二次世界大戦に従軍したビリー・ピルグリムは、時間の中を不規則に旅する能力を持つ男だ。幼少期、戦場、老年、そして遠い惑星トラルファマドール——彼の意識は脈絡なくこれらの時間を行き来する。
戦時中のビリーは、ドレスデン爆撃の生存者となった。1945年2月の連合軍による都市爆撃は、民間人を含む数万人の命を奪った。ビリーと戦友たちはドイツ軍の捕虜として、元屠殺場の地下「スローターハウス5号」に匿われていたため生き延びた。だが焦土と化した街で死体を掘り起こす作業は、彼の精神に消えない傷を刻む。
戦後、ビリーは妻と家庭を築き眼科医として成功するが、内心は空虚だ。1968年、飛行機事故で妻を失い、自身も重傷を負う。彼はトラルファマドール星人に誘拐された体験を語り始め、「すべての瞬間は常に存在し続ける」という宇宙的真理を説く。死もまた単なる状態の一つに過ぎないと彼は言う。
最終的にビリーは講演活動中に暗殺される。彼は自分の死を事前に知っていたが、トラルファマドール式哲学に従い何もしなかった。物語は「そういうものだ(So it goes)」という言葉を死の記述ごとに繰り返しながら、戦争の不条理と人間の無力さを淡々と描いて幕を閉じる。
読みどころ
- 時間非線形の語り口が戦争トラウマの断片性を完璧に体現しており、形式そのものが主題となっている
- 「そういうものだ」という反復句が、死と悲劇への慣れと麻痺を皮肉かつ詩的に表現する
- ドレスデン爆撃という実際の歴史的惨事を、著者自身の体験をもとに描いた告発文学としての側面
- SF的要素が現実逃避ではなく、極限状態での人間の心理的防衛機制として機能している
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